Message from huenica
「overcome」のアレンジに携わってくれたhuenicaよりメッセージをいただきました。
「言葉の裏側にある音色」
なっちゃんのNewアルバム「overcome」。
huenicaとして全10曲中8曲にアレンジ、サウンドプロデュースとして参加させていただきました。
前作「BOOKMARK 」ではフエニカとして確立してきたアコースティックな、生楽器を主軸に置いたサウンドをなっちゃんの楽曲に置き換え、歌い手としてもその中に入ってもらいました。これからのミュージシャンキャリアの中でずっと持っていけるような、いわばお気に入りのスニーカーのような作品を完成させたのが2019年のことでした。
そして2022初頭、Newアルバム収録予定のデモをもらいました。
世界中の人々と同じく変わってしまった日常、未来の不安、見え隠れする希望が各楽曲に散りばめられていて、この数年逃げずに自分に向き合ってたのだなという言葉の強さを感じました。
その中でおもしろいと思ったのは、そういう個人的な感情をうまく各楽曲の主人公の心情に入れ込んでいて、まるでこの時代を過ごしたいろんな人々のストーリーをなっちゃんが代弁してくれたように感じたこと。
そこで、今作のサウンドはジャンルも取り払い一つ一つの言葉の裏側にある音色を探す事にしました。
「overcome」の嘆きの言葉にある乗り越えていこうという意思、「三度目の桜並木」の春を感じ、マスクの中に微笑みを隠しながら鼻歌を歌っているような感じ、など。そんな風にアレンジを進めていきました。
使用楽器も僕等の主軸のギター類鍵盤類を主軸に、今回は人が集まった演奏よりも、籠り切ってフエニカ2人だけで向き合っていくのが楽曲の心象風景に合っている気がして、ほぼ全てをフエニカスタジオで録音しました。
リズムプログラミングやヴィンテージリズムボックス、moogのアナログシンセサイザーでのベースが多用されたのもその理由で、楽曲に向き合ったからこそ自然に生まれた、まさに今のサウンドだと思います。
ボーカルレコーディングの際も今作は、自分の感情が出たり、楽曲によっては主人公に寄り添っていたり、なっちゃんが歌うのをブースの外から聴いていても楽しそうでした。(歌録りが真夏でブースの中が暑過ぎてごめんなさい)
激動する時代を過ごした時に、音楽として、ストーリーとして作品を残すことは大切だと思います。
今作、kainatsu 「overcome」というそれぞれの希望が詰まった作品に携われて幸せでした。
いろんな人々の生活に寄り添ってくれたら幸いです。
huenica 榎本聖貴